(序章前)
13-14頁注
今でこそ元気な赤ん坊のようにも見えるリリスだが、専門家が診れば絶叫するような、文字通りの奇跡の産物だ。何しろ生命を定義づける根幹とも言える、肉体も細胞も持たない状態なのだから。実際には原罪を持たぬ剥き出しの魂である。その霊格の高さから様々な奇跡を起こし、自身の存在すら一時的に固着させているものの、肉の器を持たない幼子はあまりに脆弱。放っておけば、魂そのものがいつ霧散してしまうか分かったものではない。
(略)
ただし様々な仮説で語られているのは、表層、現実世界においてエネルギーを安定させるためには実体のある器が求められるという点だ。天使や悪魔でさえ多くの場合は依代や霊媒を求め、それができなければ人工的に用意された魔法円、あるいは偶発的に生み出された心霊スポットなど極めて限られた狭い空間に呼び出される。全く起きないとは言わないが、ああいった存在が剥き出しの状態で自由に表を闊歩するのは極めて珍しい事例である。
- 西洋魔術の前提・第三の前提を参照。
- 純粋な人間の魂に関しては、黄金夜明は魔術の実践体系であり魔術師は現実世界の人間なのであまり語られない、※というより奥義に属するのではないだろうか。大元のユダヤカバラにおいては魂が転生し、上位の世界と現実世界(物質世界)を往還することで浄化されより上位の世界を目指すという思想がある(生命の樹についてを参照)。
- 天使や悪魔、※もしくは転生する人間の魂はアストラル界またはより抽象的な世界にいる、別の世界に住む渦巻く力である知性体もしくはそれに準ずる存在であり、現実世界に影響を与えるには人間を介する(依代や霊媒)か適した場所を使う(魔法円や心霊スポット)が必要になる、と考えられる。
- 上位世界(アストラル界またはより抽象的な世界)の存在を現実世界に固着させる方法は、知るかぎりの黄金夜明の体系や独自研究には見当たらない。クロウリー魔術においてはムーンチャイルドの方法 — 生まれる三ヶ月より前の胎児に上位存在を呼び下ろす(クロウリーは胎児に魂が宿るのは生まれる三ヶ月前と考えていた) — が一応ある。
16-17頁注
「その男はアレイスターが唯一認めた師匠にして最大の親友だった。その男は未熟な医療技術が生み出した阿片中毒の犠牲者だった。その男はブライスロードの戦いにおいて、真っ先に敗北して道を歪められた。その男は西洋での権力争いから外れ、治療のためセイロンにてヨガを学び、皮肉にも『黄金』から爪弾きにされ人生に失敗した事で健康な体を取り戻した」
(略)
「……我が名は『黄金』の魔術師アラン=ベネット、あるいは仏門の僧侶スワミ=マイトラナンダ。西の端で浸した毒を抜き、東の果てより皆の救済その途上を歩む者なり。とでも紹介しておこうかな?」
- アラン・ベネット紹介を参照。
- セイロンで健康を取り戻したのかは確認が取れなかったが、後年にイギリスで仏教徒として活動した辺りで再び体を悪くしている。
- ※禁書が元ネタ通りなら意外と若い。ブライスロードの戦いの時点でアレイスター25歳、アラン・ベネット28歳。
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